福地公認会計士事務所

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公認会計士 福地徳恭

セブンイレブン値引き制限問題

昨日、セブンイレブンがフランチャイズチェーン加盟店に対し、弁当などの売れ残り商品について値引き販売を制限するように圧力をかけていたとして、公正取引委員会が不当だとして排除命令を出しました。この件に関しては、あちこちで賛否両論の意見が展開されています。

まず、セブンイレブン本社は一部の社員が強制ととれる発言をした可能性があることを認めたものの、排除命令に従うかどうかについては慎重に検討したいというにとどまった。安易な値引きは加盟店側に不利益になるもので、排除命令は見当違いではないか、という立場だと思われる。一方、加盟店側では本部サイドの不当な圧力であり、売れ残り商品のリスクをすべて加盟店が負う制度がそもそも問題なのではないか、という立場があると思われる。

ここで、このフランチャイズシステムについて今一度考察してみようと思う。加盟店は一定の加盟料を支払ってフランチャイズチェーンに加入でき、フランチャイズチェーンで扱っている商品や看板・ブランド・販売手法などを利用することができる。コンビニでの主力商品である弁当などはすべて、加盟店側の買い取りとなり、また、アラリ(実際の売上-仕入原価)から40~50%のロイヤルティーを本部に支払うため、すべて売ることができればアラリが仮に30%とすれば15~18%程度の利益が加盟店に残る。もちろん、そこから人件費や水道光熱費などの経費がかかるので、加盟店側にとってはそれほどおいしいシステムとは思えない。それが、売れ残りが生じればその仕入原価分だけまともにコストがかさむため、赤字となる加盟店も出てくると思われる。

ここでもし、加盟店が売れ残り商品を値引して仮に仕入原価で売ったとしたらどうなるだろうか。本部は本来、アラリの40%超のロイヤルティーを受け取れるが、売れ残り商品にかかるアラリはゼロのため、ロイヤルティーは入らない。一方、加盟店側はアラリはゼロでも仕入分コストを回収できるため、アラリゼロでも売る意味は大きい。ここがポイントだ。本部サイドが勝手な値引販売を行わないように指導しているのは、ロイヤルティーを確実に収入するためなのだ。

これを、本部の加盟店いじめととるか、フランチャイズシステムを運営する初期投資や運営費用を考慮すれば当然と考えるか、これが今回の議論の本旨だろう。公正取引委員会は、フランチャイズシステムを否定するものではないが、加盟店側の自主的な創意工夫の道をふさぐことは許されないから、値引き制限は不当だとした。しかし私は、加盟店側に値引きの自由を与えれば、ロイヤルティーで成り立っているフランチャイズシステムの根幹を揺るがすと考える。なぜならば、定価販売によるある程度の販売予測をもとにロイヤルティー収入の予測が成り立つが、値引競争が起こることによりアラリは相当薄まりロイヤルティー収入が激減すると思うからである。これでは、新規出店募集や商品企画などに影響が出て、現状のフランチャイズシステムが機能しなくなる恐れがあると思う。

今回の排除命令で、少なくともフランチャイズシステム、特にロイヤルティーの計算や売れ残り商品の原価負担そして廃棄コストを本部と加盟店がどう見直していくか、検討せざるを得ない状況になるだろう。

 

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