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公認会計士 福地徳恭

混合診療判決について

混合診療についての東京高裁判決が先月あったが、結果は「混合診療禁止は適法」と一審の東京地裁判決を取り消した。そもそも、混合診療とは何なのか?

皆さんがお医者さんにかかる時、通常は健康保険を使って診療代の7割を国から支払ってもらい自身の負担は3割となります。この時、保険が適用される診療については厚生労働省が細かく規定しており、診療代を表す点数までも一律に決まっています。一方、厚生労働省が規定していないあるいは認可されていない診療方法や投薬については健康保険が適用されず、保険外診療となります。そして、診療を受ける際、保険がきく診療と保険外の診療とを同じ医院ないし病院で受ける場合の診療のことを「混合診療」というわけです。問題は、混合診療を受ける場合保険外診療はともかく保険に該当する診療までもが保険外として、自己負担になってしまうところです。

たとえば、がんの治療で保険のきく放射線治療とまだ国から認可を受けていない抗がん剤治療を受けようとする場合、すべて自己負担で治療費を支払わなければならず、患者にとっては少しでも有効な治療を選択しようとする場合に治療費の問題で断念しなければならないのはおかしな話です。しかも、法律に混合診療は禁止するという明文規定がないことから、行政解釈の誤りであるとして今回の訴訟になったわけです。

さて、訴訟は最終審まで行くでしょうから見守ることとして、皆さんはこの問題をどう考えますか?患者の立場からすれば、少しでも良い治療を受けたいのに選択肢が狭まるとして混合診療を解禁すべきだとなりますね。一方、国は安全性が確保されない治療が広がる危険性や所得による医療格差の拡大を理由として、混合診療を原則禁止する立場を取っています。

私は、歯の治療など自費による治療を選択する患者はすでに大勢いるのですし、患者に診療選択の自由を与えるべきで混合診療を早期に解禁すべきと思います。所得格差による医療の公平な享受がなされないというのは、先ほど言いました歯の治療などすでに身近部分で所得に応じて各人が治療法を選択している話です。確かに、生死にかかわる診療の場合、所得に応じて結果が異なったとなれば問題かもしれませんが、そもそも医療もサービスであり良い治療は診療報酬も高い、ということは当然ありうることですし、高度な治療になればなるほど同じ診療でも医者によって結果が異なると思いますから、その診療費が同じであること自体がおかしいと思います。つまり、保険での診療はベースの部分としてとらえ、それは国民皆保険ですから皆享受でき、その先の保険外診療は個々人が判断すべき、これは非常に検討すべきテーマだと思います。

それでも、今回民主党はこの問題をマニフェストに載せておらず、解禁論議は低調とのことです。この理由は、解禁が巷で言われている格差社会の拡大を助長する問題だからでしょうか?私は、日本の格差は欧米ほどの大きな問題ではまだないと思うのですが(日本の金持ちは世界の長者番付で100位はおろか500位にもほとんどいないのでは?)、今の格差など問題ではなく、未来にチャンスが平等に与えられる社会になっていない、もしくは、希望を持てない社会になっていることが問題なのだと思います。 それは、昭和の年功序列社会はとっくに終わり、21世紀の新しい生き方に変わるべく、日本人が真剣に取り組むところから始めなければならない問題です。

 

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