福地公認会計士事務所

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公認会計士 福地徳恭

究極の選択

先日の漁船転覆遭難事故で3人の方が救出されたニュースには、本当に驚かされた。まず、遭難から4日間も経った後での救出だったこと。奇跡だろう。助かった理由は、漁船の中に閉じ込められたまま、その空間だけ水に浸からず空気も保たれたことだ。外へ脱出しようとしたが、周りの仲間に制止されてじっと救出を待っていたことが最終的に吉と出た。

他の方は死亡が確認されたり行方不明となったりされたが、いずれも外に出たあるいは投げ出された方だ。おそらく、外に出るか中にとどまるかを彼ら自ら選択できたわけではなく、一瞬の出来事だったのだろう。もし、転覆船の中にとどまるか救命ボートに乗って外に出るか選択ができたとしたら、その時自分はどちらを選ぶのだろうかと想像する。船や海のことは全く素人でわからないが、今回の出来事を知った後ならば転覆船にとどまる方を選ぶのだろうか。どの道、究極の選択だしその後の運命はまさに神のみぞ知るところだろう。

九州の韓国(からくに)岳で遭難した子供さんは、残念ながら3日後?に救助されたが助からなかった。ご家族とはぐれた直後に足を滑らせて谷間に滑落したのか、それとも山中に迷っているうちに力尽きて倒れたのか、詳細は不明だが、これもその場所にとどまるか動き回るのかの選択があっただろう。すぐ先の運命など、誰にもわからない。人間の力など、大自然には無力だとしみじみ思う。

全く話は変わって、先日の日経新聞の最終面に「ナガオカ」の記事があった。あの、レコード針のナガオカである。今も会社は健在なのだ。この会社にも究極の選択があった。CDとアナログレコードが入れ替わる時に会社は大リストラをするのだが、レコード針を作り続けるのか止めるのか、と。結論は作り続けると。今、ナガオカは世界のレコード針の8割?を超えるシェアを持っているそうだ。CD全盛でも全世界に残っているアナログレコードは無くなりはしない。むしろ、マニアの間等でLPレコードが大切に保存されている。彼らにとってレコード針は永遠の必需品だ。非常に興味深い話だ。しかも、ナガオカではレコード針の売上が総売上に占める割合は数パーセントだという。レコード針を作った技術を生かして、きちんと、次世代の売り物の開発に成功しているのだ。

人間には、運命は受け止めるものだ、という基本的な考え方があるかもしれない。しかし、企業にとっては単に運命だと外部環境の変化を受け入れて衰退して行くわけにはいかない。そこには、究極の選択がある。

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