福地公認会計士事務所

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公認会計士 福地徳恭

先行き不透明なIFRS導入

IFRSの完全適用に向けて、今年(2011年)中に判断するとしてきた日本と米国でそれぞれ慎重論が強くなってきており、その適用時期の明言は先送りされる公算が高くなってきた。

まず、アメリカSEC委員長が、今週21日にワシントン市内で講演し、「IFRS適用を求める米企業や投資家の声はそれほど多くはない」と語り、適用の是非を慎重に判断していく方針を示した、というのが日本経済新聞電子版の記事である。それは、アメリカ金融規制の詳細作業中であり会計基準の優先順位が下がっており、また、景気動向に減速懸念があることも背景にあるという。一方、時を同じくして日本では自見金融担当大臣が「少なくとも2015年3月期について強制適用は考えておらず、仮に強制適用する場合であってもその決定から5~7年程度の十分な準備期間の設定を行うことが必要だ。」とのコメントを発したとのこと。さらに「2016年3月期で使用終了とされている米国基準での開示の使用期限を撤廃し、引き続き使用可能とする。」と付け加えたそうだ。これは、今の政権が完全な米国追従であることを決定づける内容である。

何はともあれ、これで今までIFRS導入に向けて対応を進めてきた企業サイドは、その作業を減速せざるを得ない状況になるだろう。EU加盟国などのヨーロッパ諸国に関係会社を持つ企業はIFRSに対応する必要性が元々あるので問題ないかもしれないが、そうでない企業にとってはどうすべきか混乱するだろう。そもそも、日本がどういうスタンスで会計の国際化に取り組んでいくべきかの柱が明確でないために、各国の動向に右往左往してしまうのではないか。なぜ、IFRSなのか、導入すべきと仕組みの話ばかりが先行して肝心の導入目的がはっきりしていないのではないか。日本基準を捨ててまでIFRSに統一すべき理由を、今一度考え直す時なのかもしれない。

今の政治の混乱をそのまま映し出していると思う、このIFRS問題。原発をどうすべきか、長期にわたる日本のエネルギー問題あるいは国としてどういう未来像を描くべきか、これがよく議論されていないのと同じ根幹の問題のような気がする。

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