福地公認会計士事務所

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公認会計士 福地徳恭

円安は望ましいか?

野田政権が解散を宣言してから円安が始まり、100円を上回った後さらなる円安懸念が強まっている。おそらく、105円程度までは今月中に下がってしまうのではないだろうか。報道では、輸出企業をはじめ円安をもたらしていると思われている「アベノミクス」効果を歓迎しているようだが、本当に円安は望ましいのだろうか?

まず、世界的企業(トヨタや日産などの自動車産業や輸出企業)の円ベースでの業績は上がっているとのことで、ニュース等で大きく取り上げられている。しかし、これは為替の影響であり本業の円安による売上増加メリットはこの半年程度で本当に現れているのだろうか?しかも、ドルベースでの決算は実際どうなのだろうか。国際的に業績を見る場合、世界はドルベースの決算書を見るだろう。円安による円ベースでの押し上げ効果はあるかもしれないが、ドルベースではせいぜい横ばいなのではないか。この点を、ニュースは全く報道していない。

次に、日本全体で考えた場合、円安は輸出産業は多少メリットがあるかもしれないが輸入企業や日本の一般消費者は円ベースでの輸入コストが上がるためデメリットが大きい。すでにガソリンや小麦などに価格転嫁がなされているとのことだが、さらなる円安が進めばさらに輸入品の価格が上昇することになる。アベノミクスが求めている物価上昇すなわち2%のインフレターゲットとはこの効果を求めたのだろうか?

私は理系の人間で経済学は全くの素人だが、インフレにはディマンドプル型(需要増によるもの)とコストプッシュ型(仕入コスト増加によるもの)があるらしいが、景気的には前者は望ましいが後者は望ましくないとされている。今起きていることは、円安による輸入コストアップのコストプッシュ型であり、まさかこのインフレを望んでいるわけではないだろう。しかし、このままでは悪いシナリオのインフレが起こる可能性がある。

安倍政権が行おうとしているリフレ(インフレを起こそうとする)政策が期待しているところは、輸出産業など日本の大手企業の業績が良くなり、従業員の給料アップに反映されて消費が刺激されることであろう。しかし、ついこの前まで最悪の業績だったトヨタやパナソニック・シャープなどといった日本を代表する企業が、仮にこの円安で業績を回復したからといってすぐに給料アップを行うだろうか?あるいは、仮にアップを行ったところで消費者はすぐに消費を拡大するだろうか。将来を慎重に見て貯蓄してしまうのではないか。また、中小企業の従業員にも給料アップの恩恵は回るのだろうか。それまで、この円安によるメリットが持つだろうか。むしろ、円安の進み過ぎでデメリットの効果が表れてしまうのが先ではなかろうか。

私は、為替相場はせいぜい100円/ドルくらいで現状推移してくれるのが望ましいと考えるのだが、いかがだろうか。これ以上の円安は、さまざまなデメリットが露呈してしまい日本経済をより深刻な状況に突き落としてしまう気がしてならない。

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