つい1か月くらい前の日経新聞に出ていたことだが、最近はやりの有料老人施設やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を展開する会社が、資金難に陥り倒産するケースが後を絶たないそうだ。ブームに乗って資金面で脆弱な中小零細会社がこういった事業に乗り出して、自転車操業をしているうちに資金繰りに行き詰って倒れてしまうということらしい。しかし、原因は資金面で脆弱だからというだけではないと思う。
私は一昨年、まさに上記と同様の業種の会社の再建が可能かどうかのコンサルティングに関わったことがある。そこで驚いたのは、サ高住や老人施設を何件も建設したり運営したりしているにも関わらず、管理面が全くおろそかにされていたということだ。というよりも、営業を含めすべてが場当たり的対応でやり過ごされてきたのではないかと疑ってしまうくらい、数字が分からない。当然、きちんとした経理部がなく、資金繰りの管理もどんぶり勘定。言ってみれば毎日、アイマスクをしながら交通の激しい道路を横断しているようなものだ。これではいつか、車にひかれてしまう。
つまり、資金面で脆弱だから倒産したのではなく、どんなに資金面で潤沢であろうときちんとした経営管理ができていない会社は、いずれは倒産の憂き目に遭うということである。そして、その経営の責任はそういった管理面をきちんと構築することを求められている社長にあるわけである。
経営トップは、イケイケどんどんの売上アップだけを求めればよいのではない。そこが分かっていない経営者が意外と多く、だから、たまたま運良くブームに乗っただけで次々と売上拡大だけに傾注してしまって失敗するのである。経営もまた、スポーツ同様攻めと守りのバランスが重要なのである。