福地公認会計士事務所

外資系企業向け英文会計・税務サポート
...
公認会計士 福地徳恭

給与所得控除などの税制改正は続く

2020年より、給与所得控除が10万円縮小される代わりに、基礎控除が10万円増大する。これは、給与収入が850万円以下の給与所得者が該当するため、多くのサラリーマンに増税の影響はない。しかし、850万円を超える給与収入のある方については、給与所得控除が10万円超縮小されるため、増税となる。単純には、高額な給与をもらっているサラリーマンや複数の会社などから給与をもらっている経営者層に対する増税である。
公的年金についても、公的年金控除額が10万円縮小される。年金生活者(年金のみを収入として暮らしている方、を想定している)で、公的年金等の収入金額が1,000万円以下であれば、基礎控除の10万円アップがあるので、増税とはならない。こちらも、単純には年金あるいはその他の所得の合計金額が1,000万円を超える方は公的年金控除額が10万円超縮小となるため、増税となり、高額所得者をターゲットにした増税と見える。
逆に言えば、低中所得者層に対する減税の手当てはここでは見当たらない。一方、2019年10月の消費増税はいよいよGOのようだ。これは、すべての方に対して増税となる。いわば、日本の税制は個人に対してはどんどんと増税策が進んでいるということになる。一般的な国民は、それに伴いどんどん貧困になっていくということである。
さて、給与所得控除については、給与をもらっている方に対してのみなし経費であり、自動的に控除してもらえるので大変なメリットがある。特に、起業して会社で経費を使い、給与をもらって、その給与からもまたみなし経費を認めてもらえるので、2重にメリットがあるからということで、それが分かる人は喜んで起業したのだし、国もそれを推進すべく給与所得控除を認めてきたのではないだろうか。なんでも、給与所得控除を拡大したのは田中角栄氏だったという。起業家の誕生を促進することを願った宰相だったということではないだろうか。夢のあった時代だ。それが、今はみなし経費の不透明性などという議論が正論となってしまい、給与所得控除は今後ますます縮小していくのだろうか。私は、この位の「遊び」というか「余裕」くらい認められなくなると、日本の社会はますます委縮してしまい、国民の遊び心や余裕も奪い取られていく気がしてならない。はっきり言って、高額所得者からもっと税金を取れ、と言うのならば、サラリーマンで1,000万円が高額所得者ですか?と言いたい。1,000万円や2,000万円程度でどんな豪勢な暮らしができるだろうか。しかも、給与所得控除を減らすならば、同時に所得税率を下げる措置が必要ではないだろうか。

福地公認会計士事務所ブログ・最近の投稿